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東京新聞
働き方改革で時間外労働の上限規制が猶予されてきた業種への適用が2024年4月に迫っている。建設業界もその一つだが、状況は深刻だ。既に全国で倒産が相次いでおり、民間調査会社からは「家が建てられない」事態になる可能性も指摘される。パビリオン建設が進まない大阪・関西万博を巡っては、自民党内から「超法規的措置」を求める声も上がるなど労働環境の改善の道は険しい。
◆倒産件数は9月までで昨年超え
帝国データバンクは、8月の全国企業倒産集計の中で注目の動向として建設業を取り上げた。1~8月の建設業の倒産は1082件と6年ぶりに1000件を超えた。その後、9月までに1207件となり、昨年1年間の倒産件数1204件を上回った。このままいくと過去5年で最多となることが確実という。
主な要因は物価高の影響だが、職人の高齢化や若手の応募が減少するなど人手不足が背景にある。同社の飯島大介さんは「建築士や施工管理者など業務に不可欠な資格を持つ従業員が離職している。現場での作業員自体も不足しており、中小企業の受注、施工がままならなくなっている」と指摘する。
同社の調査では建設業の68.3%が「人手不足」を感じている状況で、コロナ前の水準を上回る。地方では、災害復旧のための工事入札が不調になるなど既に人手不足の影響が出ているという。飯島さんは「24年以降、残業規制で人手がさらに必要となり、都市部の現場に職人が引き抜かれる。地方では、需要も資材もあるのに『家が建てられない』『道路の修繕ができない』『除雪ができない』といった事態が多発する可能性がある」と警鐘を鳴らす。
◆大工は60歳以上が4割 インボイスも重荷に
特に木造住宅の担い手の大工の減少は著しい。国勢調査では、全国の大工の人数は20年時点で約30万人と20年間で半数以下となり、60歳以上が4割を占める状態だ。芝浦工業大の蟹沢宏剛教授(建築生産システム)は「業界全体ではゼネコンなどが職人の社員化など待遇改善を進めてきたが、大工は『一人親方』と呼ばれる個人事業主が多く、働き方改革から取り残されてきた」と指摘する。
また今月から始まったインボイス(適格請求書)制度が重くのしかかる。「待遇改善のためには職人を社員として雇用し、労働時間と賃金を保証する必要があるのに、事務の負担で高齢の個人事業主の廃業に拍車をかけることになる。後継者も不足しており、職人が圧倒的に足りなくなる」と強調する。
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